STORY
mollyとjean
朝になり、mollyは 勇気を出して一呼吸してから呼び鈴を鳴らした。
出てきた人物は 小さな少女が訪ねてくるなんて珍しいので何事かと思っていた。
英語で、私の名前はmollyです。
と言った。
年配のフランス婦人は、英語でこんにちはmolly。私はjeanよ。なにかご要かしら。
と言ってくれた。
mollyはjeanという婦人が品のある出立ちの優しい物腰の方だったので、少し安心した。
しかしmollyは黙って立っていた。
説明してわかってもらえないとわかっていたから。
「よかったら、あなた 中へお入りなさいよ」
mollyは藁をも掴む想いだったから、家の中に入った。そしてこう言った。
「貴方が競売で落札したコートは元は私のもので人に返さなければいけないのです。 私はロンドンから来ました。どんな方法でもいいからそのコートをどうか買い戻したいのです。」とだけ、mollyは伝えた。
jeanは少し驚いて、
「このコートをとても気に入っているの。
デザイン、機能、素晴らしく兼ねてあって民藝と前衛が共存しているの。民藝というのは細部まで全て手仕事のことよ。 裏生地までデザインが素晴らしいの!完璧な傑作なの。私は素晴らしいものを集めるコレクターといったところかしら」
と話した。
でも、と続けて 「あなたはどんな方法でこのコートを買い戻すおつもりなの?」
mollyは、思わず言った。「私は絵描きです。そのコートの温もりの絵を描きます!あなたに気にいっていただけるまで何度でも描きます!そしたら絵を買ってください!お願いします」
jeanはびっくりしていたが、少し考えてから楽しそうに笑って
「おもしろい提案ね。いいわ。
そうね、あそこで描くといいわ。」
ついていった先には、以前だれかが使っていたような 道具の揃ったアトリエがあった。
「寝る場所もあるから。
あまり無茶なことしたら危ないのよ?あなたまだ若すぎるわ。
そうだわ、お腹が空いているんじゃない?食べなさい!」
「ありがとう、ありがとう、jean!」
そして貴婦人は美しい仕草で 温かくて美味しい紅茶をいれて、mollyが見たことのないきれいなケーキを差し出した。
jeanは 「絵がよくなきゃ、あれは売らないわよ。そうしたらあなた、フランスを楽しめばいいわ、ふふ」
jeanはmollyに余計な詮索する言葉も言わず、とてもおおらかに受け入れた。
mollyは外へ出て、橋から よく知ってるのとは違う川の色を見ていた。
街並みをみて、遠くまできたんだなあ、と川に石を投げて たてた音を聞いた。
さあ、コートを取り返さなきゃ、mollyは意気込んだ。
それからjeanは病気で倒れた。
5年後に亡くなった。
品のある、懐の大きな人だったと参列した者が皆口々に言った。若くして亡くなった旦那さんとは子どもに恵まれずに、再婚もせずに長い間寂しかったろうと皆、jeanの生涯を知る者が嘆いていた。mollyは、ずっと青い空を見ていた。
亡くなる3か月くらいまえ、夜アトリエの入り口にjeanは立っていた。
いつものようにmollyはまた描ききれた気がしないキャンバスに向かっていて、名前を呼ばれてやっと気が付いた。
jeanは泣いていた。
「もう、いいのよ!molly。
あなたは気付いていないの?
このお部屋、温かで優しい同じ色でいっぱいよ!
この沢山の絵で部屋があなたの想いでいっぱいだって言っているの!
あなた最初からあのコートを描ききっていた。
この絵、全部私が買わせてもらうわ。
私はね、molly。あなたと絵から、あなたが云う「温もり」をもらったのよ。コートからじゃないわ。
私がずっと欲しくて、お金では決して手に入らなかったものなのよ!このコートの一番重要な事は、デザインじゃない。とても温かいってことだって、あなたの絵に教えてもらった。
あなたとずっと居たかったの。
許してね」
そう言ってjeanはmollyをぎゅっと、しばらく抱きしめた。
「コートは、あなたに渡します。それを言いにきたの」
jeanから、ついにコートを渡された。
「ありがとう」
mollyはそう言ったけれど、
コートを売ってくれた事へなのか、絵を認めてれた事へなのか、mollyは自分で考えても分からなかった。
mollyは、jeanにもう横にならないと、体に障るよと 寝室につれていった。
眠る前に、jeanは言った。「あなたの色々な作品がみたいわ。描き続けていって、molly」
mollyはコートを羽織って、jeanのお墓に寝転んでいた。
全ての財産でmollyの全ての絵を売却して jeanは死んでいった。
「コートは、元の持ち主に返しに行くわ。
jean、私 絵が描ける体があればそれでいいのよ。
あんなにお金がたくさんあったって、何になるっていうの?あなたはもういなくなってしまった。
私あなたのこと、本当のお母さんのように思ってたんだわ」
jeanの声が聞こえるかもしれないって、お墓の下に耳を澄ます。mollyには大きいこのコートに裸でくるまって、そのまま一晩そこで安心しきって眠った。
mollyは、「母と娘」は 元は一つの塊なのかもしれないって感じていた。
出てきた人物は 小さな少女が訪ねてくるなんて珍しいので何事かと思っていた。
英語で、私の名前はmollyです。
と言った。
年配のフランス婦人は、英語でこんにちはmolly。私はjeanよ。なにかご要かしら。
と言ってくれた。
mollyはjeanという婦人が品のある出立ちの優しい物腰の方だったので、少し安心した。
しかしmollyは黙って立っていた。
説明してわかってもらえないとわかっていたから。
「よかったら、あなた 中へお入りなさいよ」
mollyは藁をも掴む想いだったから、家の中に入った。そしてこう言った。
「貴方が競売で落札したコートは元は私のもので人に返さなければいけないのです。 私はロンドンから来ました。どんな方法でもいいからそのコートをどうか買い戻したいのです。」とだけ、mollyは伝えた。
jeanは少し驚いて、
「このコートをとても気に入っているの。
デザイン、機能、素晴らしく兼ねてあって民藝と前衛が共存しているの。民藝というのは細部まで全て手仕事のことよ。 裏生地までデザインが素晴らしいの!完璧な傑作なの。私は素晴らしいものを集めるコレクターといったところかしら」
と話した。
でも、と続けて 「あなたはどんな方法でこのコートを買い戻すおつもりなの?」
mollyは、思わず言った。「私は絵描きです。そのコートの温もりの絵を描きます!あなたに気にいっていただけるまで何度でも描きます!そしたら絵を買ってください!お願いします」
jeanはびっくりしていたが、少し考えてから楽しそうに笑って
「おもしろい提案ね。いいわ。
そうね、あそこで描くといいわ。」
ついていった先には、以前だれかが使っていたような 道具の揃ったアトリエがあった。
「寝る場所もあるから。
あまり無茶なことしたら危ないのよ?あなたまだ若すぎるわ。
そうだわ、お腹が空いているんじゃない?食べなさい!」
「ありがとう、ありがとう、jean!」
そして貴婦人は美しい仕草で 温かくて美味しい紅茶をいれて、mollyが見たことのないきれいなケーキを差し出した。
jeanは 「絵がよくなきゃ、あれは売らないわよ。そうしたらあなた、フランスを楽しめばいいわ、ふふ」
jeanはmollyに余計な詮索する言葉も言わず、とてもおおらかに受け入れた。
mollyは外へ出て、橋から よく知ってるのとは違う川の色を見ていた。
街並みをみて、遠くまできたんだなあ、と川に石を投げて たてた音を聞いた。
さあ、コートを取り返さなきゃ、mollyは意気込んだ。
それからjeanは病気で倒れた。
5年後に亡くなった。
品のある、懐の大きな人だったと参列した者が皆口々に言った。若くして亡くなった旦那さんとは子どもに恵まれずに、再婚もせずに長い間寂しかったろうと皆、jeanの生涯を知る者が嘆いていた。mollyは、ずっと青い空を見ていた。
亡くなる3か月くらいまえ、夜アトリエの入り口にjeanは立っていた。
いつものようにmollyはまた描ききれた気がしないキャンバスに向かっていて、名前を呼ばれてやっと気が付いた。
jeanは泣いていた。
「もう、いいのよ!molly。
あなたは気付いていないの?
このお部屋、温かで優しい同じ色でいっぱいよ!
この沢山の絵で部屋があなたの想いでいっぱいだって言っているの!
あなた最初からあのコートを描ききっていた。
この絵、全部私が買わせてもらうわ。
私はね、molly。あなたと絵から、あなたが云う「温もり」をもらったのよ。コートからじゃないわ。
私がずっと欲しくて、お金では決して手に入らなかったものなのよ!このコートの一番重要な事は、デザインじゃない。とても温かいってことだって、あなたの絵に教えてもらった。
あなたとずっと居たかったの。
許してね」
そう言ってjeanはmollyをぎゅっと、しばらく抱きしめた。
「コートは、あなたに渡します。それを言いにきたの」
jeanから、ついにコートを渡された。
「ありがとう」
mollyはそう言ったけれど、
コートを売ってくれた事へなのか、絵を認めてれた事へなのか、mollyは自分で考えても分からなかった。
mollyは、jeanにもう横にならないと、体に障るよと 寝室につれていった。
眠る前に、jeanは言った。「あなたの色々な作品がみたいわ。描き続けていって、molly」
mollyはコートを羽織って、jeanのお墓に寝転んでいた。
全ての財産でmollyの全ての絵を売却して jeanは死んでいった。
「コートは、元の持ち主に返しに行くわ。
jean、私 絵が描ける体があればそれでいいのよ。
あんなにお金がたくさんあったって、何になるっていうの?あなたはもういなくなってしまった。
私あなたのこと、本当のお母さんのように思ってたんだわ」
jeanの声が聞こえるかもしれないって、お墓の下に耳を澄ます。mollyには大きいこのコートに裸でくるまって、そのまま一晩そこで安心しきって眠った。
mollyは、「母と娘」は 元は一つの塊なのかもしれないって感じていた。
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プロフィール/オトナコドモ舎 主宰

- クロカワミツヨ/黒川光世 映像作家・絵本作家
- 8mm Filmに限っては自家現像をしています。
経歴
代表作・「陽餌」16mm
・「紐理論」16mm、ビデオ
・「泡姫のおとしもの」8mm 調布映画祭入選作品
、その他。ミュージックビデオも手がける。
2011年 桜台poolにて、個展「MITSUYO OHYA MUSEUM」を開催。
2023年 出版社「オトナコドモ舎」を設立。
同年、絵本「ひとしずく」を11月に出版。
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