STORY
食用
「牛の話」
「僕は野牛。
自分は大きくて、強くて、誰も敵わないだろう。
旅に出て、自分より強いやつを探すんだ。
闘って、僕は自分を讃えるんだ。」
彼は 大きな自然の中から走り出した。
走る姿の神々しいことだろう。彼は「生」を体いっぱいに感じ 嬉しかった。
どれくらい走ったか、大きな山が一つ そびえ立っていた。
そのふもとに野牛が見たことのない白と黒の模様をした牛がたくさんいて、のんびりと並んで寝ている。
「きみたちは、何かする事はないのかい?」
野牛は言った。あくびをしながら、一頭が答えた。
「こんなに草があるじゃないか。全部食べきれない程だよ。何て幸せなんだろう。
ああ眠い。」
またあくびをした。
耳におかしなものが付いていた。
野牛は思った。「なんだ、こんな牛ばかりなのか。しかし変なものだな。
こんなにぜい肉をつけさせて。誰が食料を与えるのか?何のために?」
しばらく見ていると、人間が来て 牛を一頭一頭連れていく。野蛮な感じではない。
野牛は付いていく。離れたところから見ていた。
お乳を搾られて、また元の草原に帰っていく牛。
そして、そこに訪れた感じの人間が連れていく牛もいた。
野牛は、どこに連れて行くのかと思って追いかけた。
牛はタイヤの付いた固い乗り物に乗せられて、草を食べていた。そのまま乗り物はすごいスピードで走っていった。
野牛でも追いつかない速さだった。
しかし野牛は走った。追いかけた。乗り物は見失ったが、みたことのない賑やかな'街'まできていた。
牛の匂いがする。
たどり着くと、牛の皮が吊り下げられているのをみた。
なにか匂いを消すものが施されているが、野牛の臭覚は確かだった。
中に野牛が入ってみると、たくさんの牛の生皮が下がっていた。
その光景は、野牛にとってとても恐ろしいものだった。
その奥には生きた牛がいて、悲鳴とともに倒れたところだった。
その後、人間が慣れた手つきで皮をはいでいった。
皮を全部剥ぎ取られた牛をみて 野牛はこんなに残酷な世界が在っただなんて、人間のすることが こんなに醜いなんて。
牛は、人間に勝てなかったなんて。泣いた。野牛はその牛に頭を擦り付けて泣いた。
また人間が来て、野牛は隠れた。
皮がない牛は、また別の場所へ運ばれていった。
野牛は 人間のする事の恐ろしさに もう追いかけることはできなかった。
野牛は思った。
「自分は、大きな自然の中の野生であった。そのことがどんなに穏やかだったか。」
あくびをして、人間の元で草を食べる牛の穏やかさとは、別のものであった。
あの牛たちは、人間のする事を疑いもせずに無惨に殺されていくのだ。
野牛は、人間が 自分のできる想像とははるかに恐ろしい事を考える生き物である事を知った。
「牛編」
自分は大きくて、強くて、誰も敵わないだろう。
旅に出て、自分より強いやつを探すんだ。
闘って、僕は自分を讃えるんだ。」
彼は 大きな自然の中から走り出した。
走る姿の神々しいことだろう。彼は「生」を体いっぱいに感じ 嬉しかった。
どれくらい走ったか、大きな山が一つ そびえ立っていた。
そのふもとに野牛が見たことのない白と黒の模様をした牛がたくさんいて、のんびりと並んで寝ている。
「きみたちは、何かする事はないのかい?」
野牛は言った。あくびをしながら、一頭が答えた。
「こんなに草があるじゃないか。全部食べきれない程だよ。何て幸せなんだろう。
ああ眠い。」
またあくびをした。
耳におかしなものが付いていた。
野牛は思った。「なんだ、こんな牛ばかりなのか。しかし変なものだな。
こんなにぜい肉をつけさせて。誰が食料を与えるのか?何のために?」
しばらく見ていると、人間が来て 牛を一頭一頭連れていく。野蛮な感じではない。
野牛は付いていく。離れたところから見ていた。
お乳を搾られて、また元の草原に帰っていく牛。
そして、そこに訪れた感じの人間が連れていく牛もいた。
野牛は、どこに連れて行くのかと思って追いかけた。
牛はタイヤの付いた固い乗り物に乗せられて、草を食べていた。そのまま乗り物はすごいスピードで走っていった。
野牛でも追いつかない速さだった。
しかし野牛は走った。追いかけた。乗り物は見失ったが、みたことのない賑やかな'街'まできていた。
牛の匂いがする。
たどり着くと、牛の皮が吊り下げられているのをみた。
なにか匂いを消すものが施されているが、野牛の臭覚は確かだった。
中に野牛が入ってみると、たくさんの牛の生皮が下がっていた。
その光景は、野牛にとってとても恐ろしいものだった。
その奥には生きた牛がいて、悲鳴とともに倒れたところだった。
その後、人間が慣れた手つきで皮をはいでいった。
皮を全部剥ぎ取られた牛をみて 野牛はこんなに残酷な世界が在っただなんて、人間のすることが こんなに醜いなんて。
牛は、人間に勝てなかったなんて。泣いた。野牛はその牛に頭を擦り付けて泣いた。
また人間が来て、野牛は隠れた。
皮がない牛は、また別の場所へ運ばれていった。
野牛は 人間のする事の恐ろしさに もう追いかけることはできなかった。
野牛は思った。
「自分は、大きな自然の中の野生であった。そのことがどんなに穏やかだったか。」
あくびをして、人間の元で草を食べる牛の穏やかさとは、別のものであった。
あの牛たちは、人間のする事を疑いもせずに無惨に殺されていくのだ。
野牛は、人間が 自分のできる想像とははるかに恐ろしい事を考える生き物である事を知った。
「牛編」
3/13
プロフィール/オトナコドモ舎 主宰

- クロカワミツヨ/黒川光世 映像作家・絵本作家
- 8mm Filmに限っては自家現像をしています。
経歴
代表作・「陽餌」16mm
・「紐理論」16mm、ビデオ
・「泡姫のおとしもの」8mm 調布映画祭入選作品
、その他。ミュージックビデオも手がける。
2011年 桜台poolにて、個展「MITSUYO OHYA MUSEUM」を開催。
2023年 出版社「オトナコドモ舎」を設立。
同年、絵本「ひとしずく」を11月に出版。
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